映画 『サーミの血』
差別・保護されている先住民族に生まれた少女が自由を手に入れようとする青春ドラマ。
「1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族、サーミ人は差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。
そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た――。」
引用
https://www.uplink.co.jp/sami/
差別と聞いたら偏見やら暴言やら見下しやらを受けているとおもうけど、保護という名で自由を奪って研究対象になっていたのは、この映画を見るまで知らなかった。
暴言を受けてるシーンもあるけれど、先住民族として「守られて」いるシーンが痛々しい。
サーミを保護するために、サーミで生まれた人達はそのコミュニティから逃れることを許さない。
先生はサーミの生徒達を見下してはいない。勉強好きで優秀なエレ・マリャに詩の話が持ちかける。先生は彼女達を卑下にしていない、伝統的な彼女達を「守って」いるのだ。
伝統的な衣装を身にまとって、髪をゆい、トナカイを飼って、テントで生活をする。
昔からの生活を廃れさせないために。
「あなたたちの脳は文明に適応できない」
という言葉は、「あなたたちを文明に適合させない」と置き換える事ができるのではないだろうか。
エレ・マリャは自身の運命に立ち向かって自由を手に入れようとした。
保護された場所ー家族や仲間たちがいる場所から離れるということ。
映画の冒頭は、エレ・マリャが年老いた姿で出てくる。息子がいて、葬式のために故郷に戻っている。
彼女は自身の手で新しい家族を手に入れた。一文なしで故郷を飛び出した少女は、力強く生き抜いたのだ!
気難しい老婆のエレ・マリャ。あれから、波乱万丈な人生を送ったと伺える。
老いた彼女はヨイク(サーミの伝統的な歌)を嫌い、サーミ人は嘘つきで物取りだと罵倒している。
サーミのコミュニティでエレ・マリャが虐められてはいない。夏祭りの件で鼻つまみ者にさられはしたけれども。
故郷に帰るのを億劫になるほど、彼女はサーミを嫌う。そして、亡くなった妹に「私を許して」と。
力強く生きて新しい自分になって自由になって、一文無しから人並みの人生を手に入れただろう彼女から見える、弱さ。